研究内容RESEARCHES

広島大学大学院先進理工系科学研究科 スマートイノベーションプログラム
スマートロボティクス研究室 教授
石井 抱 Idaku ISHII
>> 研究テーマ
1秒間に1000コマ以上の実時間画像処理を実現する高速ビジョン技術を始めとして、人間の感覚能力を遥かに上回る実時間センシング技術の確立を目指した情報システム/デバイスの研究開発を行うとともに、高速化・集積化を念頭においたアルゴリズムの研究、さらには人間には感じとることが難しい振動ダイナミクス等の情報を積極的利用した新たなセンシング技術の実現を目指します。

強制水泳試験における実験動物の自動行動解析システム

強制水泳試験(FST)は、ラットやマウスなどの実験動物における、抗うつ薬の薬理学的効果やストレスによって引き起こされる動きの変化を評価する試験として広く知られている。だが、30fpsといったビデオ画像を用いた目視あるいは従来の自動測定方法は、FSTにおいて実験動物が頻繁に高速な四肢運動を行うため、正確かつ客観的な評価が難しい。そこで本研究では、強制水泳運動が持つの水泳運動成分(immobility, climbing, swimming)を高フレームレート動画に対して提案アルゴリズムを適用することにより、実験用ラットに長時間にわたる水泳運動を定量化するシステムの開発を行った。

本研究では、これらの3つの行動を区別するために、四肢の運動と胴体の垂直方向の運動に着目する。 immobilityでは四肢の動き、 胴体の動きともに小さい一方で、 climbing, swimmingのどちらにおいても動物は高速に四肢を動かしている。またclimbingでは、胴体を激しく上下動させるのに対し、swimmingにおける胴体の垂直の動きはそれほど大きいものとはならない。 これらの3つの行動を画像を用いて判別するためには、6〜7回/秒といった四肢の高速反復動作が交互に行われることにより、10Hz以上の画像変化が生じることを考慮する必要がある。 そこで本研究ではFSTの行動定量化において実験動物の高速な四肢運動を十分に捕捉できる高フレームレート画像を用いるソフトウェアを実装することとした。

構築した水泳運動定量化システムは、実験用ラット用の水槽、フレームレート240fpsで320×400画素の画像に対する高速ビジョンINCS1010、高フレームレート動画キャプチャシステム、及び解析用パソコンから構成される。構築したFST運動定量化システムを用いて、典型的な実験用ラットの一種であるWISTARラットを用いた動作検証実験を行った。 これらの動作検証実験は、Wistarラット一匹あたり9分間に渡って行った。 同様な実験を、3匹のWistarラットに対して行い、特にclimbing、swimmingについて、目視観察に比べて高い精度での行動判別を実現可能とすることを検証した。

swimming MPG動画(296KB)
swimmingの様子
climbing MPG動画(296KB)
climbingの様子


forced swim /graph